ヴァイオリンは弦を掴み、離した後の振動を楽器全体に循環させることで
ボディや弓が振動して”ヴァイオリンの音”になります。
ボディに振動が循環していないと、”弦の音”になります。
しかし、弦は”張るもの”です。
通常、数十キロの圧力をかけています。
弦を横にはじいて生まれる振動と、振動を縦に抑え込む力が同時にあるんですね。
また、強い弦がキツく張ってあるのと、柔らかい弦が緩く張ってあるのでは、
弦を横にはじくときの感触が異なります。
強い弦がキツく張ってあると、弓を弦に載せるだけで済むところが、押し付けてしまっても音が鳴ります。
ただし、綺麗な振動の循環とは言えません。
弦の振動が、弦の張力と弓の圧力に勝って、ボディに循環したとしてもロスがあります。
このとき、音質が固く、不要な曇りがある音色になりがちです。
このバランスがもっと崩れると、ノイズになります。
左手の指の押さえすぎも、実は音のくぐもりの原因になります。
振動と圧力が釣り合わないとその楽器の音量や音質を最高点に持って行けません。
ガット弦にも色々あり、本来の柔らかさを提供しているのはごく一部の銘柄です。
ガット弦自体も会場の広さや時代に合わせて少し強めになっているのが現状です。
柔らか目のガット弦を張って、当初困ったことが起こりました。
ノイズです。
これが…原因に気づくのに2ヶ月かかりました。
どこも剥がれていない、部品も取れかけていない、アジャスターも緩んでいない、
ゴミも入っていない、指板も歪んでいない、弦の溝もずれていない・・・
原因はペグボックス(弦を糸巻きに巻いてある箱の部分)でした。
弦はペグの穴に通してから巻きます。
抜けないように5mm 〜1cm弱穴から出す人が多いと思いますが、
この飛び出た部分が糸巻きの箱に触れてビリビリいっていたんです。
こんなことはナイロン弦を使っていた頃にはありませんでした。
それくらい弾くときの体の運動の加減、感触も、楽器自体の振動の循環も異なるということです。
いままで震えていなかったところが大きく震えるようになった、つまり今までは楽器のポテンシャルを出しきれていなかった、と言えます。
初心者の方には全く奨められませんが、疲れてしまう、体を故障しがち、力が抜けない、という悩みがある方にはこういう「弦から教わること」も大事だと考えています。