アインザッツ(Einsats)という言葉があります。
端的にいうと、弾き始める時の合図です。
ヴァイオリンの場合、以下のような動作にそれが現れます。
(例)
・息を吸う音、吐く音
・息を吸う体の動き
・弓の動き
・弓の動きに伴う体の回転
・楽器を持ち上げる動作
・視線
・共演者を誘い込むような体の動作
発表会や合奏などの場合、共演者に背中を向ける人も多いのではないでしょうか?
このとき、出だしが一緒の曲でこじんまりとした動きで始められると、後ろから見ている共演者はもう不安でいっぱいになります(苦笑)
自分の演奏を後ろから撮ってみて、自分が共演者として後ろにいたらどういう気持ちになるか、を観察してみるのをお勧めします。
弓を呼吸と一緒に、拍子や音楽の流れに合わせて、直前でさっと弦の上に載せ、乗せる時のエネルギーを使って横に動かしていく。
これはトレーニングが必要です。
そして、呼吸(息を吐く、吸う)のスピード、息の量は曲のテンポに直結します。
大きくおおらかに弾く音ならば、その前に息をゆっくりと、たくさん吸い込みます。
弓を最初から置いた状態で始まる、弓を置いてからしばらく経って突然音を出す…これはいけません。
幼少の方だと、弓を置いてスタートするケースがありますが、せめて息を吸い、楽器をそれに合わせてあげるなどの動作が必要です。
それすらないと、「そういうものだ」と成長するので、話してもピンとこない場合があります。
徒競走で
「ようい………………………………………………………………….ドン!」となったらドンまでの間「まだかよ!!!」って思いますよね。
そういうことです。
僕自身はピアニストの後方に立つことの方が多いです。
よく、お客様から「あれはどういう仕組みでピアニストがずれずについてくるんですか????」とよく尋ねられます。
これは内緒ですが、あるものを使うことで弓の動きがピアニストに見えています(鏡などそれ用の道具は持ち込みません)
一緒に弾く相手に伝えることをここまでお話ししましたが、無伴奏であってもこれは大事なことです。
演奏を聴いてくださる方が、同じ呼吸の流れに入って、最後の音まで連れ添ってくださった時の演奏の充実感といったらこれ以上ないほどです。もちろん弾く自分の努力だけでは叶いません。会場の雰囲気、聴く方一人一人が別件の気掛かりを抱えてきていないか、などなど。でも、稀に叶います。そのときは会場全体が本当に幸福な感じです。
自分は、ある12月にビーバーのパッサカリアを弾いた時にありました。あれは、ほんとうに弾く側の身体にもいい影響があります。
あの時の感覚をもういちど~~~と日々鍛錬です。