今回はクリスマスにちなんだ俳句を選んでフランス語で創作・翻訳してみました。
最初に日本の俳句や他言語で書かれた詩作をフランス語で書いてみる場合、選者の方に言われた印象深い言葉があります。それは"Traduire, c'est trahir"でした。直訳すれば「翻訳は裏切ること」になるでしょうか。具体的には2つ目、伊丹三樹彦の俳句の語句「眼鏡の中」が良い例だと思います。漢字で書くと「眼鏡」でこの語句があるからこそ、この俳句の抒情的な描写の世界を創り出していると思います。しかしながら、フランス語でそのまま「des lunettes」としてしまうと言葉の語感の背後にある文化の違いが出てくるようです。というわけで、ここでは「手燭」がうつるのは「眼鏡」ではなく「少女の瞳」としました。
雪道や 降誕祭の 窓明かり
杉田久女 SUGITA Hisajo 1890-1946
A travers la fenêtre, Noël éclaire le chemin enneigé.
手燭澄む 聖歌乙女の 眼鏡の中
伊丹三樹彦 ITAMI Mikihiko 1920-2019
La lueur des bougies, dans les yeux d’une jeune fille qui chante.
息安く 仰臥してをり クリスマス
石田波郷 ISHIDA Hakyo 1913-1969
La paix de Noël arrive même aux malades dans leur sommeil.