幼い私は平均点。
体育以外は可もなく不可もない評価が多かった。
英会話、音楽教室、スイミングスクール、少林寺。
習い事はどれも長続きしなかった。
同じことを繰り返す作業が苦痛で仕方ない。
要は練習が嫌だったのだ。
鶏が先か、卵が先か。
そんな性格だからか暗記が苦手だった。
漢字の形は覚えられても書き順がわからない。
でも、一番苦痛だったのは国語じゃなかった。
それは算数の九九だった。
計算力はあっても暗記力がない。
そんな私に九九は小学校最大の難所だった。
「いんいちがいち、いんにがに」
呪文をひたすら頭に詰め込む練習は、
今思い出しても頭が痛くなる。
当然、学校の授業で覚えきるのは不可能だった。
母に監督されながら呪文を何回も繰り返した夜。
一文字でも間違うとやり直し。
半べそどころか泣きながら呪文を唱えた。
練習は嫌だが覚えられない自分はもっと嫌だった。
私が覚えた頃にはクラスのほとんどが暗記していた。
図や表に書いていたらもっと早く覚えられたかもしれない。
でも、母は呪文の暗記をさせた。
母には算数の才能がなかったのだろう。
何度も勉強しなさいと怒られたが、
具体的な方法は教えられていない。
勉強という苦行を自分からしないから余計に怒られた。