- *カナダへの道【前半】を読む
- *いざ!カナダへ⑬
- *想像と現実⑭
- *未知なる道へ⑮
- *でこぼこ道を歩き始める⑯
- *落ちぶれた、わたし⑰
- *転んでも。⑱
- *大海へぶち込まれる⑲
- *壊れていく、わたし⑳
- *復縁、それとも~㉑
この時のわたしは、モノトーンへ…。
社長に退職の意思を伝えた日は、快晴だった。
わたしの心も晴れ晴れとしていた。
「何で!? 労働ビザが取れたばかりで、これから永住権を目指せるのに」
社長はひどく驚いた様子で、わたしにそう言う。
復縁したと思っていた社長にとっては、寝耳に水。
わたしは、社長にこれまでの恩義を感じている!とまず伝えた。
しかし、自分の目指す方向ではない気がして…
この先を考えると日本に帰国する事がベストだと思った!と真剣に話した。
会社を退職すると、今までの労働ビザは失効し
ビジタービザでカナダに滞在するしかない。
それでも、わたしは退職する事を固く決めていた。
そして、社長はわたしの辞意を受け容れた。
だが、実は
わたし自身は日本に帰国する気は全く無かった。
とにかく、このブラックな会社から一日も早く抜け出し
次のカナダに残る道を探す事を考えていた。
退職を決めてからのわたしは、これまでの辛く悲しく苦しい気持ちから
一気に解放された。
それは、わたしにとって「消化試合」をこなすような日々で
残された日々を、ただただ淡々とこなす
清々しいものとなっていた。
このまま円満に退職するのだ!
それが、わたしの目下の夢と希望。
だが、わたしは退職の日を待つばかりではなく、密かに
カナダでの仕事仲間や、日本の取引先などに今後の事を相談した。
「もう、カナダで就労先を見つける事や
労働ビザ取得は難しいのではないか!?」
長年、カナダで働く友人や先輩、日本の取引き先の担当者が口々に言う。
それでも、わたしはもうすこし踏ん張って、頑張ってみたかった。
このまま、11月末の退職の日まで
静かに、穏やかに時間が過ぎていくはずだった…が
事件は、突然
それも夜遅くに、起きた。
日本の取引先、K社の担当者からの電話が鳴った。
「Toriaさん、今FAX送ったんだけど届いたかな?
来週の出張の事とか書いてあるんだけど」
FAXは届いていない。
担当者は、電話の向こうで送信記録を調べている。
わたしは、何だか不安になった。
そして、次の瞬間
担当者が気まずい感じで話し出した。
「Toriaさん、ちょっとまずい事になったかも。
間違えて、Toriaさんの会社の社長さんとこにFAX送っちゃったみたい」
わたしは何がまずいのか、わからずにいた。
とにかく、担当者はそのFAXを急いでわたしのところに送るとの事で
電話を切り、待っていた。
A4用紙1枚、手書きでぎっしりと書かれている。
最初に、来週の出張の件が書いてあり
後半になると… わたしは、思わず声をあげた。
そこに書かれていたのは
Toriaさん、退職する事になって良かったと思うよ。
実は、前から社長さんの事は信用できないな…なんて思っていたところがあって。
Toriaさんとのつながりがあったから、あの社長さんを通して仕事を頼んでいたけど
今後、直接お願い出来るなら、その方が安心出来ます。
このFAXが、なんと
その「当の社長」の元に送られてしまっているというのだ。
その現実に、一気に体が震えた。
どうしたらいいのかわからず、わたしはカナダで唯一
親代わりでもあり、仕事の大先輩でもある友人に
“この事”を急いで連絡した。
そして、間もなくわたしのアパートメントの部屋のドアを何度も何十回も叩く音がする。
「この野郎、出てこい!」
それは、社長の怒りの声だ。
取引先からのFAXを発端に
私の退職が純粋なものではなく
「わたしの裏切り」であった事を知った社長。
深夜にに響く
その怒り狂う声は、尋常ではなかった。
それはまるで
ドラマの中で見る、闇金の借金取りのようで
わたしはまさに、そこから逃げる者。
絶望から再起を目指すはずが
わたしは、また今まで以上の
深い絶望の淵に立ってしまった…
中森明菜「水に挿した花」(1991)
この日の事は
今でも”映像として”
はっきり、私の中に残っています。そして、その時の
何とも言えぬ不安や、胸の痛みも。
とにかく、怖かった・恐かった。
ほとんどホラーですよ~(m~-~)m
そんなFAXが
社長の元に間違って、送られちゃう!なんて。
円満退社どころか…お先真っ暗すぎます。
この後、もっと私は真っ暗になっていきます。
でも、今ここに居ます!(*`艸´)ウシシシ~続きを読む
TORIA (o ̄∇ ̄)/