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何の術(すべ)もなかった。
彼にとっては「結婚は仕事の道具なのか」と思うと
腹立たしくて仕方ない。
でも、きっと私に足りないものを
あの彼女が持っているであろうことが、悲しく情けなかった。
“終わりの実感のない恋愛
そして失恋は、後を引いた”
二人が程なく結婚し、オーストラリアに行った事は風の噂で聞こえて来た。
そして、私は社内で「あの男(ひと)に捨てられたオンナ」として陰口を言われていた。
広いロッカー室の向こうから、わたしの噂話を面白ろ可笑しく話す女子社員たち。
わたしは“彼女たち”の声が響くほど、自分の息を潜め、自分の情けなさを呪った。
来る日も来る日も、何をやっていても涙が流れそうになり
人が居ないところでは、大粒の涙が止まらぬ日々が一年も続いた。
今思うと、よく一年も泣いていたものだ。
そこまで価値のある男だったのか…
一年経った頃には、わからなくなっていた。
しかし愛と憎しみは背中合わせに居る事を、この時知った。
もう、泣いていても仕方がない。
あの男(ひと)のために
そして、あの女(おんな)のために。
情けない自分を呪い、流す涙はもう枯れた。
わたしは、ようやく前を向いて立ち上がる。
何をしていいかは、わからない。でも…
あ!わたし、海外に行きたいって思っていたな…
それだけが、頭に浮かんだ。
それは、旅行ではなく
漠然としているけれど、何かを成し遂げて、何かを掴んで
海外に出たかった。
空っぽのわたしを、何かで埋めたい。
「大学行こう!」
その決断は、私の人生の前向きさではなく
もっとドロドロした、いやな感情の塊。
あの男と本当に決別するため
「見返してやる」
そこが、わたしのスタートだった…The End!
米津元師「Lemon」(2018)
私も、大概イヤな奴ですね~(ΦωΦ)フ
今になれば、本当に「ありえないような笑い話」で話せちゃう事ですけど
負のキモチが生きるエンジンになったような、気持ち悪い話ですね~(何故か他人事風味)。
でもね、不思議と
年月と共に、ソコに上書きしていくように色々な事を経験し
気が付けば「あの恋は風化したのか、成仏したのか」。
良い勉強をさせてもらった…そんな感じです。
あの別れから10年余り経った時。
私はもうカナダに居ました。
風の噂で聞こえてきたのは
あまり幸せではない
あの人たちの事でした…ほんとの本当のThe End!
TORIA (o ̄∇ ̄)/