彼のプロポーズにすぐに答えられなかったのは
母の病気の事があったからだ。
彼は数ヶ月の内に、一緒にオーストラリアへ行ってほしいと言う。
「ついていきたいけれど
母の病気の事があるから、すぐには無理。すこし時間がほしい」
そう言うのが精いっぱいだった。
わたしは親に「その事」を話せぬまま、悩んでいた。
ついていきたい、彼と結婚したい
その思いは絶対なのに、気持ちはとても暗かった。
彼は周囲が驚く中、突然に会社を退職した。
先輩がたちあげたという会社に合流し、オーストラリアへ旅立つ準備を始めていた。
会える時間は、だんだんと少なくなり
退職から1か月ちょっと、経った頃‥‥
突然、彼から打ち明けられた。
「結婚しようと思っている女(ひと)がいるんだ」
わたしは「え!?」と言ったまま、何が何だかわからずにいた。
「友達の紹介でさ。
結構、歳行ってる女(ひと)なんだけどね
ま、話も合ったし、彼女すぐにオーストラリア行けるって言うんだよ」
え!?
すぐにオーストラリアに一緒に行ける相手だったらいいって事なのか…
わたしは今、目の前で言われた事が理解出来ぬまま
でも、ひたすら抵抗する言葉を投げかけ続けた。
「少し待ってって言っただけなのに、なんでそんな事に」
しかし、彼のキモチは変わらない。
何を言っても、わたしが納得しないと思った彼は
とんでもない行動に出たのだ。
数日後・・・
池袋で彼と待ち合わせると、彼の横に背が高く、髪の長い女が立っていた。
「あぁ、彼女だから。あのさ二人で話してくれない?」
名前も何も名乗らない、目の前の
その「彼女」とやらは、妙に自信ありげな表情で
わたしの事を、見下ろしている。
だが、信じられなかったのが
彼はその女とわたしを残し、駅の改札の雑踏に消えて行った。
見知らぬ女と、取り残されたわたし。
“わたしたち”は無言のまま、落ち着いて話せる場所まで
とりあえず歩き出した。
東京事変「修羅場」
なんていう事でしょう…
ありえないと、思いません!?
今、思い出しても
恐い恐いホラーのような「場面」。でも、この後の方が
もっと恐かったのよ。そして、悲しくて、切なくて、情けなくて…つづく
TORIA (o ̄∇ ̄)/ ▶第3話を読む