これをどう和訳しますか?
If a single shade tree is properly placed on the south side of the house, it can equal the cooling effect of a large air conditioner.
この和訳の問題は、中学レベルの英語と、大学受験レベルの英語とは、どう違うのか?という問題につながります。
まず、中学レベルの英文和訳はどのようにやるのでしょうか。簡単な例で考えてみましょう。
中学では、「give=与える」のように、英単語に和訳をくっつけておけばOKです。和訳するときは、それぞれの単語の意味を組み合わせるだけです。例えば、
I=私, give=与える, you=あなた, a present=プレゼント
という単語のリストが頭のなかにあれば、
I give you a present.
のような文も、さきほどの単語のリストをならべかえるだけです。
「私」は「あなた」に「プレゼント」を「与える」。
これで大丈夫。
でも、大学受験レベルの英語はそうはいきません。
例えば、冒頭に出てきた文はどう訳せばいいでしょうか?注目してほしいのは"placed"です。
たった一つの日よけの木であっても、家の南側に適切に【 placed 】いれば、大きなエアコンに匹敵するだけの冷房効果があるのだ。
placeは動詞では、「置く」という意味があるので、多くの受験生はそのまま、「家の南側に適切に置かれていれば」と訳してしまいがちです。
でも、「木を置く」って、ヘンですよね!?
そこでもっと考えましょう。辞書を引いてみると、「place=配置する」という訳もあります。これでもいいのですが、もっと意味の通る自然な訳語にしてもいいんですよ。
答えを言いましょう。
「家の南側に適切に【 植えられて 】いれば」
でカンペキです。
placeが「植える」になるとは思いませんよね。でもここでは「plant=植える」という意味合いで用いられています。筆者が、「plant=植える」という意味あいだけでなく、「その植物を配置する」というニュアンスをもたせたいから、ここでは「plant」でなく「place」を使ったのです。
このように、「place」は、場合によっては、まさかの「植える」という訳になることもあるのです。
これは中学のレベルでは難しいですね。表面的な単語の知識では到底太刀打ちできません。辞書を何度も引いたりして、その単語のコアのイメージをつかまないといけないのです。
このように、大学受験レベルの英語の和訳は、
①英文(単語)のコアの意味をつかんで、
②そのコアの意味を変えずに、
③自然な文となるような言葉を選ぶ
という作業が重要になってくるのです。
ここでは英語力だけでなく、国語力が求められます。
注意しなければならないのは、多くの高校生はこのコアの意味をつかんで表現することに苦労しているという事実です。なぜか。
それは、単語帳には単一の訳語しか書かれていないことが多いからです。
単語帳は効率的に覚えるのに役立ちますが、本来単語にはコアのイメージがあって、ひとつの日本語の訳語は、その一部分を切り取った訳語でしかないということを、肝に銘じておきましょう。
中学英語の和訳と高校英語の和訳の違いは、ここにあります。