沙石集の巻八に、もの騒がせな智運房という僧が出てくる。
エピソードはいろいろあるが、酒の席でのこと。
夜が更けて後、「もっと、酒買ってこい。」ということになった。
この僧が、徳利を持って酒屋に行き、ほどなく帰ってきた。
人々が徳利の酒を、銚子に移してみれば、浮草が浮いている。
飲んでみたところ、水だった。
どうゆうわけかと尋ねると、こう言った。
「猿沢の池のほとりで滑って、徳利を落としたが、すぐに落としたところを汲んで、徳利に入れたのですが。」
騒がしいばかりでなく、少し足りないようだというのが、語り手の感想でした。