今回は特に疑問を持っている方に説明してみたいと思います。
また、どこも「イタリア語」と書いてありますが、イタリア語だけに限らず、どんな外国語の学習にも適用される内容です。
大変残念ですが、あくまで私も人間で、学校の頃の学び方は今と違う結果、特にある文型は難しすぎて生徒を困らせてしまうか心配したりする時に、無意識に方針に従わなくなることもあります。
せっかくまとめたこの論文で、この価値観を頭の中でしっかりと固めようと思います。
また、皆さんの納得を得ることで、私も安心して、自信がついてきて、よりいいパフォーマンスを出せますよ。
「生徒」=「赤ちゃん」⁈ Lo studente è come un bambino
- ①徐々に進みます。最初にするのは自己紹介みたいに、自分の世界に纏わる話だけです。
知識の範囲が広がりつつ、言語能力も上がり、成長します。
最初は「赤ちゃん言葉」などで甘えられますが、子供が成長しつつ、だんだんと話し方が大人っぽくなります。大人も、こういう風に少しずつ進んでいきます。基本的にはレッスンの新しい内容を100%習得できるわけにはいかないです。毎回、身に着けることは1つだけでも大成功です!
❌難しすぎて自分の日常と関係がない内容はダメ
✅簡単ですぐ使える内容はいい - ②本当の教材は周りの環境です。周りの人(両親、友達、アニメなど)を観察し、色々なことを発見することで基礎を学びます。ただ、生徒の皆さんの場合は講師しかいないことがほとんどです。しかし安心してください。皆さんがしっかりと基礎を学べるように講師が的確なアドバイスをしますから。とにかく、イタリア語のインプット(刺激)が多ければ多いほどいいですね。これは、できる限りイタリア語をイタリア語で教えている理由の1つです。
❌文法のテキストだけに頼ってはダメ
✅実際にイタリア人が使うイタリア語を参考にしたらいい - ③反復が鍵です。毎日同じ言葉を聞いたり言ったりすることで、長期記憶に残ります。話を聞いたりしたりすることは「習慣」になるのも重要なポイントですね。大人である皆さんの場合、動詞の変動などの反復は退屈だと分かりますが、言語力を上げるのに欠かせない練習です。
❌週1~2回のレッスンは不十分
✅毎日の自習は一番大事 - ④選択範囲を設定します。つまらないと思っている内容を避けます。刺激的になるのは、つまり効率的な勉強になるのは自分にとって面白くて役に立ちそうな内容だけです。どうしても覚えられない単語は、そもそも自分に対してどんな役にも立たないということでしょう。具体的な例を挙げてみれば、日本を辿り着けないような所に思っていた幼いころの私は、日本から戻ってきたばかりの知人にオモチャのお土産をもらった時、日本語表記を一所懸命頑張って読もうとしましたが、オモチャの材料などのつまらない内容ばかりで、なかなか頭に入らなくて、今考えたら完全に時間の無駄だったのですね。
つまり、言語学習では、きっかけとモチベーションがとても大事なポイントです。それがないと、なかなか上達できないですね。同じように、講師が言語を教えるのに熱意をもっていなければ、成功できないということでもあります。
❌専門用語、諺、方言、スラングなどはとりあえずやめたらいい
✅モチベーションを上げてくれる楽しくてためになる内容・レッスン・先生がいい - ⑤規則は教えません。赤ちゃんにルールを教えることはないでしょう。例えば、歩くこと。歩き方を説明しますか?てか、説明できますか?しないし、できないでしょう。直接見せたほうが分かりやすいですからね。もちろん最初は難しくて間違ったりすることが多いですが、少しずつ挑戦することで、いつか「あ、そっか、こういう風に動くと歩けるのか!」と悟りを得るみたいな感じですね。頭が自分で作りますよ、ルールを!歩き方をママに説明してもらっても、実際には歩けないでしょう!自分の頭で作ったルールだけが記憶に残りますから。外国語の学習も同じです。講師に文法を説明してもらうより、喋ることで参考になることをインプットしたほうが、時間的にも効率がいいです。たくさんの刺激を受けることで、たくさんのルールを作れるのです。
❌直接文法ルールを説明してもらってはダメ
✅イタリア語の例文(インプット)を観察することで文法ルールを理解してみたらいい - ⑥唯一の目標は意思疎通を図ることです。最初は間違ったルールを作ることもありますよ!赤ちゃんにも。例えば、イタリア語の動詞の例をあげてみると、mangiareの過去分詞はmangiato, そしてdormireの過去分詞はdormitoだから、avereの過去分詞はavetoかな?と思ってしまうこともあります。実際には「avuto」といいますね。それを聞いたり読んだりすると、「あ、ereはutoになるのか!」とすぐ分かりますよね。それでも良いのではないでしょうか?ルールは、必ずしも常に正確じゃなくてもいいということです。たくさん挑戦すれば、相手と意思疎通を図るうちに、いつかきっと正しいパターンが付いてくるでしょう。また、赤ちゃんは間違えることに怯えないため、必死に自分のニーズ・意思を伝えようと色々挑戦して、失敗から学んで、最終的に成功します。ということで、もう一つの大事なポイントは、習いたての表現をすぐアウトプットするのです。
❌間違えないように一所懸命頑張らなくてもいい
✅間違えても大丈夫なので、とりあえず言いたいことを言うのに挑戦してみたらいい - ⑦無意識に学びます。赤ちゃんは大人の言うことを聞いて、まず観察してからそれの真似をしながら無意識に話せるようになります。要するに、勉強だと忘れながら勉強します。のちに説明しますが、赤ちゃんがする学び方を帰納法と言います。
❌意識の学習法だけが不十分
✅無意識の学習法も大事
「私はもう赤ちゃんじゃないよ、大人だよ」って。
確かにそうですね。大人の脳は赤ちゃんと違いますね。
「赤ちゃんは何でもスポンジのように吸収し自然と自分のものにする」とよく聞きますよね。
実は、臆することなく新しいことを覚えたり学んだりすることに長けている赤ちゃんでさえ、一日中チャレンジしていても母語の流暢さを身につけるのには5~8年間かかります。しかも、赤ちゃんには仕事とかがないのでフルタイムで学べますよね!
我々大人の場合、もっと時間がかかるということになってしまいます。
そうですね、大変残念なお知らせですが、イタリア語みたいに日本語との距離が遠い言語を数カ月で流暢に話せるようになるわけにはいかないですよ。
(※「流暢さ」の定義に諸説ありますが、今回は「語彙が限られていても苦労せずに自分を表現できる」という能力を表すとしましょう。)
大人向けの教授法 La didattica per adulti
講師の役割 Il ruolo dell'insegnante
- モチベーター:楽しいレッスン・内容を届けたり快適な雰囲気を作ることで、イタリア文化を紹介したり、イタリア感覚を感じさせたりしながら生徒の好奇心や学ぶ気分などを掻き立てます。サステナブルな勉強法には欠かせないことですね。
- 教材のセレクター:生徒にとって面白い・役に立つ・分かりやすい・ミスのない・本格的・ナチュラルなイタリア語の内容を厳選するように頑張ります。また、「何を」だけではなく、「いつ」提案したらいいかということも講師としての役目の一つです。復習や追加練習などが必要だと判断したら適当なタイミングにカリキュラムに追加しますし。
- 学習コーチ:レッスンの時間を最大限に活かしながら、一人の時間でもどういう風に復習したりイタリア語に触れるのかなどを案内します。しかも悩みや疑問などがあったら、いつでも対応します。
そして、レッスンと違う学習方法のための手段も与えます。具体的に言えば、レッスン中に取り組む文法ルール・語彙は、レッスン外で受けるイタリア語のインプットを理解し、アウトプットを発するための手段になります。 - 話し相手:これは極めて重要な役割です。言語は、相手とコミュニケーションを取るための手段ですね。話し相手がいないと、アウトプットを発するチャンスがなかなか見つからなくて、いくら勉強しても上達できないでしょう。なので、講師とイタリア語で喋る習慣を作ることが大事ですね!また、ただのイタリア人友達ではなく(そういう面もありますが!)、イタリア語教育の資格を取得したベテラン講師なので、効果的な技術を採用する上、言葉を促すのにいい方法も知っていますし、生徒の立場を理解できますし、ためになるアドバイスも与えられます。
最後に、私はイタリアに住むイタリア人ですし、イタリア旅行やイタリア料理などが大好きですので、共通点が多く、話すことがたくさんあります!
だって、私のレッスンスタイルがある生徒に合わないこともありますもんね。
ただ、直接教授法を基礎にして作っているインプットも貴重な学習プロセスの一部になりますので、言語能力の上達を早く実感できるようになりたい方は、ぜひ赤ちゃんのような好奇心で、自発性を持って、このような学習内容も取り入れてみてください。
追記 Post scriptum
- ◆グループレッスン(理解度&ペースは生徒たちそれぞれですし、一人一人の進行を確認できないため)
- ◆挑戦感が低い人(ミスしたら不安になりすぎるので、不快な経験になってしまい、最終的に学ぶ環境にならないため)
- ◆目標が試験である場合(ポイントはコミュニケーションを取れるようになるではなく、正しい文法ルールを把握しているかどうか、というのですから)
- ◆復習(既に馴染んでいる内容だと、見直す時はルールをはっきりまとめる方が効果的ですから)
※例えば、テキストの「条件法 Condizionale」の勉強が終わってから私が提供している復習教材は、条件法が具体的にどんな場面で使えるかをまとめているものです。文法ルールを基礎にしたマテリアルなので、帰納法ではなく、演繹法に当てはまります。
参考文献・ウェブサイト Fonti
Kuniyoshi Sakai – Language acquisition and Brain Development 言語習得と脳発達 (英語)
Steve Kaufmann – Intervista in italiano イタリア語でのインタービュー
Acquisizione linguistica 言語習得 (日本語)
Linguistic Society of America – Language Acquisition 言語習得
Approccio comunicativo コミュニカティブアプローチ (日本語)