子供の頃から電車が好きだった。
特急や新幹線がカッコよかった。
先頭車の速く走る顔が大好きだった。
きっかけは何だったのだろうか?
幼稚園の頃は両親と駅近くの跨線橋まで出掛けていた。
車で10分の場所である。
私が電車に大きく手を振ると汽笛を鳴らされた。
それが返事のようですごく喜んでいたらしい。
夕方から日が沈むまで私は飽きることなく手を振り続けていた。
私は覚えていないが母は面白そうに言った。
私の最古の記憶は蒸気機関車を見に行ったときのこと。
特急で1時間半の場所に出掛けて父と写真を撮った。
跨線橋には多くの人がカメラを構えていた。
父もその中に混じっていた。
「列車が来たら写真を撮れよ」
興奮しながらそんなことを言っていた。
私は『写ルンです』を構えた。
しばらくすると貨物列車が来た。
私は必死にダイヤルを回して撮った。
目的の列車ではなかったようで父の反応は冷たかった。
蒸気機関車が来た。
みんな必死にシャッターを切る。
もちろん父も。
私は待ち飽きていたが、仕方なく数枚写真を撮った。
これで帰れる、と思ったら続きがあった。
駅まで車で走って蒸気機関車を撮るというのだ。
うんざりしていたので、私は駅構内に入らなかった。
父だけ入場券を買って写真を撮りウキウキしながら戻ってきた。
この話を書いていると魅力的には思えない。
何か違うきっかけがあったに違いない。
最近、その駅で転車台を発見した。
蒸気機関車の向きを変えるためのものだ。
全国にも数えるくらいしか残っていない。
ふと、昔の私に教えたくなった。