私は運動音痴そのものだった。
背が低い、痩せてる、反応が遅い。
ケンケン相撲では無勝のオオタ君に負けていたし、
腕相撲では女子に負けて笑われていた。
スポーツや運動には興味がなかった。
Jリーグやプロ野球のお菓子は買ったことがない。
そもそもルールを知らなかった。
小学生になると嫌なイベントが発生した。
そう、運動会である。
徒競走、障害物競走、マラソン。
ビリはカッコ悪かったから必死に走った。
でも、走るとすぐに脇腹が痛くなり、
結局最下位になるのである。
3位まで貰えるリボンに憧れていたが、
一度ももらえなかった。
逆上がりも習得に苦労した。
両親に教えられて一ヶ月くらい昼から夕方まで鉄棒の練習をした。
できないとバカにされるが、できても特に恩恵がないスキルである。
なんでこんなに苦労をしなければいけないのだろう。
それくらい運動音痴だ。
だから、キックベースなんてできるわけがない。
私から積極的に参加するはずがないので、
強制参加のイベントだったのだろう。
二十人くらいが団地の公園に集まり、
1つのサッカーボールを囲んで盛り上がっていた。
私がキッカー、つまり野球で言うバッターの光景を覚えている。
「ボールが転がって来るから蹴って」
と言われて打席に立たされた。
呆然と立ち尽くす私。
意味が全くわからない。
ボールを蹴る?どうやって?
ピッチャーはボールを転がした。
ボールを蹴ろうと足を動かしたが、
想像より動きが早くて蹴ることができなかった。
さらに、ビッチャーはコースを変えてきたので、
触ることすらできなかった。
『今度こそは!』と構えていると、
「もう戻っていいよ」と言われた。
空振り三振でアウト。
無駄に燃えた闘志が恥ずかしかった。