弓の評価の表現には色々あります。
音色の面、コントロールの面、作りの面、材質の面など。
よくコントロールの面について言われる「吸いつく」、「吸いつきがいい」という表現。
弦に対して垂直の動きのように取れます。
いやいや、弓の毛は張ってるし、スティックは反ってるんだから吸い付くわけないでしょう?反動で跳ねるでしょう?
と、考える人も多いはずです。
自分自身、そう考えていました。
そもそも吸いつく云々の前に、しっかり弦を掴まないと、ピアノの音量に負けちゃうじゃん!
とも思っていました。
弓の毛で弦を擦り、音を出していくときの感触を「粘る」、「抵抗感」などと表現することがあります。
これは横向きの動作ととれます。
吸いつきがいい、粘る、抵抗感がある...まるで弦と弓が磁力で引き合うように受け取れます。
この度、メインに使える弓をお迎えしたのですが、やっと、やっと「吸いつき」の感覚がハッキリわかりました。
弦の上に毛を載せた時に「もさっ」となる弓は安心感があります。
一つずつの運弓に実感があり、確実な音の積み上げで演奏できる気がします。
ここが次元の違いがありました。
以前同じ銘柄の弓を試してから15年。
そのときはわからなかったのですが、今回明らかにわかりました。
反応の速さが全然違っており、頭の中の先読みも右腕や右手の動きも、いつも通りやっていると、弓の反応、発音に置いて行かれてしまうのです。
ほんの一瞬弓の毛が弦に触れると音がでてしまう。とてもシビア。
吸い付くというのは、ロングトーンのときより前、弦を掴む瞬間に明確にわかりました。
反応が速いということは、速く弾けるだけではありません。明暗や寒暖、輪郭の丸い鋭い、ニュアンスなど音づくりの時間、余裕が生まれるということでもあります。
ただ、15年前にはここまでハッキリとわからなかったのです。
奏法を見直したここ数年が大事だったんだな、と思います。
古典、おもにハイドンやベートーヴェンを(ロマンチックな演奏テクニックに頼らずに)納得できるまでやっていないと、自己判断で 楽器に教わるという出会い はわからない、と実感しました。
〜しやすい、というのは基本性能の話です。
楽器に教わるっていうのは、〜しやすいとは別次元の話。知らない世界、知らない感覚を教わるんですからね。
過去に自分も弓のお買い物でやらかしたことがありますが、わからないうちに自己判断は禁物です。。
予算を決めて、
信頼できる職人さんが、その値段のものから選び抜いた一本を購入するのが一番。
その段階で、商売上手のメーカーの弓は排除されてますし。(素人が買いやすい作りやセッティングというのは、意外と多いのですよ。。あー、過去の反省はいつまでも伝えていきたい)