模試でチバ君と再会し、連絡先を交換した。
成績は僕とチバ君で雲泥の差だったため、
一緒に塾の授業を受けるなんてことは一度もなかった。
話は進むうちにチバ君が転校前の知り合いについて語りだした。
彼が言うには、仲が良かった友達の大半は転校してしまい、
残っているのはほんのわずかだとか。
ゲームのナカミチ君も意地悪なヤマダ君も引っ越していた。
僕も薄情なので、仲良し以外は顔どころか名前すら思い出せない。
時の流れはこんなにも残酷なのか。
そんな中、突然チバ君が声を弾ませた。
「あ、でも、マヤはいるよ!」
(マヤ?誰だ?)
しばらく考えて、ようやく気づく。
(ああ、可愛いマヤちゃんか!)
でも僕が呼んでいたのは「マヤちゃん」だったので、
単に「マヤ」と言われるとピンとこない。
チバ君、馴れ馴れしくないだろうか?
気になった僕はマヤちゃんに連絡を取ることにした。
何度かの電話を経て、会うことになった場所は昔よく遊んだ団地の公園。
まるで映画のような再会が期待されるはずだった。
ところが、現場に到着すると公園には誰もいない。
しばらく待っていると遠くから人影が近づいてきた。
(あれがマヤちゃんか?いや、待てよ。)
相手もこちらをじっと見ているが、どこか不安げだ。
「ケイちゃん?」
「マヤちゃん?」
お互いに名前を確かめ合うやりとりから始まる7年ぶりの再会。
縄張りを巡る動物のように公園でぐるぐる回りながら
「この人で合ってるのか?」と探り合う僕たち。
(感動的な再会ってこんなもんだっけ?)
と思いつつも、確かに「誰か」には再会したので良かったことにする。