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Cafetalk Tutor's Column

Fukumaru 講師のコラム

踊り狂う神さま

2024年9月29日

イラストはかわいい巫女さんですが、踊り狂う神様って想像できますか?

大学で、日本音楽史の授業のわりと初めに、いつもしているお話があります。
秋の学期が始まって話す機会がありましたので、ここでもご紹介しますね。


『古事記(こじき)』や『日本書紀』に載っている神さまのエピソードの一つに、「天岩屋戸(あめのいわやと)神話」というお話があります。「岩戸(いわど)神話」ともいいます。

天照大神(あまてらすおおみかみ)という女性で太陽をつかさどる神様が、自分の弟の素戔嗚尊(すさのおのみこと)の乱暴に怒り、岩屋(洞窟かと思われます)にとじこもってしまいました。
太陽の神様が隠れてしまったので、神々の世界は真っ暗になり、わざわいも起こるようになりました。

そこで、困った神様たちは、天照を引っ張り出す作戦を考案。
占いやお祈りをささげた後に登場したのが、今日の主役、天宇受売命(あめのうずめのみこ)です。
桶(おけ)を踏み鳴らしながら服を脱いで激しく踊ったと書かれています。他の神様たちが見守る中、です。

ところが、日本の神様はとても明るいキャラクターなので、みんな喜んでどっと笑いました。
この神さまたちのあまりの騒ぎに、洞窟の中の天照が不思議に思って岩屋の戸を開けて身を乗り出したところを、力持ちの神様が引っ張り出し、あたりが明るくなりました。めでたしめでたし。


…いかがでしょうか。
このお話が、日本の伝統芸能の起源とされています。文字で残る中で、いちばん古い芸能のエピソードだからです。

つまり。
日本の芸能は、クラシック音楽の高尚な芸術とはほど遠く、笑って楽しむパフォーマンスが最初だったということです。

みんなで手拍子を打ったり歌ったり演奏したりして参加する、地元のお祭りのようなにぎやかな様子。歌舞伎も江戸時代にはお弁当を食べながらわいわいと見ていたそうです。

最近でこそ音楽ホールでかしこまって鑑賞しますが、もともとは参加型で楽しいのが優先されていたと思うのです。
ということで、敷居が高いと思われがちな伝統芸能ですが、気楽に楽しんでみませんか?

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