「花火」という言葉は「花(はな)」と「火(ひ)」という二つの語を組み合わせた言葉ですが、「はなひ」とは発音されず、「はなび」と発音します。二つ目の語の最初の子音が清音(点々のない音)から濁音(点々のある音)に変わるのです。この現象は「連濁(れんだく)」と呼ばれています。連濁が起こる語の例は以下のようにたくさんあります。
(1) 花火:花(はな)+火(ひ)→はなび
(2) 青空:青(あお)+空(そら)→あおぞら
(3) 灰皿:灰(はい)+皿(さら)→はいざら
(4) 鼻血:鼻(はな)+血(ち)→はなぢ
(5) 戸棚:戸(と)+棚(たな)→とだな
(6) 南国:南(なん)+国(こく)→なんごく
(7) 長靴:長(なが)+靴(くつ)→ながぐつ
連濁が起こる語は基本的に和語(日本古来の語)で、漢語(中国から来た言葉)や外来語(他の外国語から来た言葉)は一部の例外を除いて連濁しません。
(8) 経済成長:経済(けいざい)+成長(せいちょう)
→×けいざいぜいちょう 〇けいざいせいちょう
(9) サッカースタジアム:サッカー+スタジアム
→×サッカーズタジアム 〇サッカースタジアム
ただ、和語の中にも連濁しない語があります。どんな語は連濁しないのかについては、たくさんの研究がありますが、ここでは「花火」のような名詞と名詞の組み合わせに限定して、二つのルールを紹介します。
【1】2つ目の語の中に濁音がある場合
まず、「焼きそば」のように二つ目の語「そば」の中にすでに濁音がある場合は最初の音も濁音になると発音しにくいので、連濁しません。
(10) 焼きそば(やきそば)×やきぞば
(11) 鳥肌(とりはだ) ×とりばだ
(12) 合鍵(あいかぎ) ×あいがぎ
【2】前と後ろの語が並列の意味になる場合
また、前と後ろの語の意味が並列の関係になっている場合も連濁しません。たとえば、「行き帰り」のような場合です。
(13) 行き帰り(いきかえり) ×いきがえり
(14) 好き嫌い(すききらい) ×すきぎらい
(15) 受け答え(うけこたえ) ×うけごたえ
日本語学習者の人は、新しい日本語の言葉を勉強する時にこのルールを覚えておけば正しい発音を予測することができます。また、日本語母語話者の人にとっては普段意識しない日本語にこのようなルールがあることを面白く感じられるでしょう。
他にも日本語の発音や文法のルールについて知りたいという人はぜひレッスンでお話ししましょう。