私が小学生の頃、父は仕事用にパソコンを買った。
当時のパソコンはモノクロ画面だったので、
ファミコンのカラー画面には敵わなかった。
分厚くて重いグレーのノートパソコンは、
仕事用として扱われいたので、私は触るのをためらった。
父はそのパソコンで私にタイピングを教えた。
その頃は、最先端の教育方法だったかもしれない。
キーボードからひらがなの50音を探すのは大変だった。
「けいすけ」の位置は何とか覚えたが、
それでも時間がかかり、イライラした。
「ローマ字の方が早く打てるから覚えなさい」と言われ、
強制的にローマ字を覚えさせられた。
そのおかげで少しはタイピングが速くなった。
昔の日本式は今のヘボン式とは異なり、
規則性がわかりやすかったので九九ほど苦労はしなかった。
その後はテトリスをやったことしか覚えていない。
父はパソコンでテトリスをしていた。
家にはテトリスのファミコンカセットがなかったのだ。
テトリスは1段消すごとにレベルが上がり、
39段まで消すとかなり速くなる。
しかし、40段目を消すと急に遅くなり、
その後はまた段々に速くなる。
私はどうしても40の壁を越えられなかった。
父は楽々クリアできたので私に見せては、
「ここをこうするんだ。簡単だろう?」と自慢していた。
私には簡単ではなかった。
反射神経が悪く上達せず、ずっと38か39のスコアを残し続けていた。