最古の記憶は保育園だった。
次の記憶は一体いつなのだろうか?
幼い私は空を飛ぶことに憧れていた。
一瞬ではなくずっと飛んでいたかった。
滑り台から飛び降りたり、窓から飛び降りたりはしなかった。
高いところは怖かったし、
落ちるのは飛ぶということに含まれない。
当時住んでいた家は団地の3階。
窓から飛び降りたら痛いというのは想像でわかっていた。
父のイカヒコーキがきっかけなのだろうか。
紙飛行機に夢中になった。
紙は買ってもらえなかったので新聞のチラシを使って。
毎日毎日紙飛行機を折っては飛ばして遊ぶ。
ただ、部屋の中だけでは飛ばす距離に限界があった。
ある日窓から紙飛行機を飛ばした。
その日から家の窓は紙飛行機の発射場になった。
毎日窓から飛ばし続けた。
母にはその度に怒られた。
私は機体の回収をしなかったからだ。
何回怒られても懲りなかった。
何か明確な目的があったわけではない。
絵や文字や文章は一切書いてない。
純粋に紙飛行機を作って飛ばすのが大好きだった。
一番覚えているのはシトシトと雨が降る暗い日。
その日も紙飛行機を作っていた。
この雨じゃ飛ばないだろうと思った。
でも、好奇心には勝てずに数機折って窓から飛ばした。
そのうちの一機はゆらゆらと遠くまで飛んでいった。
どこまで飛んでいったのか見えなくなるほど。
『よく飛んだ!』
満足感と達成感に満ち溢れたが、
誰も共感してくれなかった。
その日以降も窓から飛ばし続けたが、
それ以上の飛距離は出せなかった。
そのうちに、あの記録はもう出せないと感じて悲しくなった。
悲しくなって飛ばすのをやめた。
空は遠くなった。