日本語教師として教えていらっしゃる方の中にも、初級レベルの人には教えられるが、中級の教え方はよくわからないという方がいらっしゃいます。今回は文型教育に絞って考えてみますが、中級文型を教える際に注意が必要なことは、①学習者は既に習った文型との違いが気になる、②学習者は似たような形式の他の文型との違いが気になる、という点です。
どういうことか、日本語能力試験N2で扱われる「~うえで」という文型を例に、説明します。(1)のような「うえで」の使い方を教えようとするときに、学習者はこんなことを考えます。
(1)留学をするうえで、明確な目標を持つことはとても重要だ。
「『留学をするときに~』とどう違うの?」「『~したうえで』という形も聞いたことがあるけど、どう違うの?」
つまり、中級レベルに至るまでに既に習った文型の知識があるために、既に習った文型で同じことが表現できそうだがどう違うのか、と考えてしまいますし、日本語能力試験を受験するために日々たくさんの文型を学んでいるので、同じような形(音)の文型を思い出して、それと同じだろうかと考えてしまいます。
したがって、「辞書形+うえで」は、後の文で「~が重要だ、~が不可欠だ」などと言いたいときに使う文型だと伝えたり、「た形+うえで」という文型もあるが、「~してから」という別の意味だと伝える必要があります。
(2){〇留学をするときに/×留学をするうえで}、将来の目標は何もなかった。
(3)私は試着したうえで買いたいから、ネット通販で服は買わない。
(2)のように、後の文が「~が重要だ」という意味になっていない場合には「辞書形+うえで」は使えません。(使ったとしても、不自然な日本語になってしまいます)
また、「た形+うえで」は(3)のように、「試着してから買いたい(試着してからでなければ買いたくない)」という意味を表します。
他にも、N3レベルの文型で「~うえに」を習っているので、その違いも気になる人がいるかもしれません。「うえに」は、(4)の例のように、「~ことに加えて」という意味で使います。
(4) 今住んでいるアパートは、駅から遠くて不便なうえに、古くて狭いから、引っ越し
したいと思っている。