私の心に刻まれている思い出の曲といえば、Norma Fraserさんが歌う"The First Cut is the Deepest"。
当時けっこう真面目な大学生をしていた私は、心の片隅でちらついている冒険心をたまの週末に聴きに行くレゲエで温めていた。大人しい性格だったので、タオルをブンブン回すコンサートや東京のイケイケなお姉さんやお兄さんがいるクラブとは無縁で、隠れ家的カフェや公園でひっそりと無定期に行われるイベントに足を運んでいた。
この一曲は、ジャマイカの有名なサウンド『Bass Odyssey』がなぜか私の住む田舎町に来てくれた時にかけてくれた。しかもなぜか、ジャマイカからはるばる所有するレコードとサウンドシステムを持ってきて生でプレイしてくれたんです。もう一回言うけど、とんでもない田舎町で 笑
彼らはウォームアップに流行りのヒップホップやみんなが知っている王道をプレイした後に、絶妙な静寂を挟んで『じゃあちょっとここからはクラシックもいっとくか』と一言マイクに残してこの曲をプレイしてくれた。突然のメロウさにグッと深まる場の空気。そしてなんだかタイムスリップしたような感覚も漂った。
その瞬間、ものすごーく悲しいことを歌っているのに、どこか晴れている不思議な彼女の声に私は完全に魅了されていた。サウンドシステムから流れるレコード特有の土臭いオーガニックなチリチリ音も初めて体験する心地よさだった。匂いや身体を貫く音の振動も含めて今でも鮮明に思い出せる3分間。音楽の力はすごいなーと思うし、それをジャマイカから届けてくれた『Bass Odyssey』に感謝。
この"The First Cut is the Deepest"、1967年のCat Stevensがオリジナルだと知ったのはだいぶ後で、その後色々な人のカバーも聞いたけれど、やっぱり私の心にはNorma Fraserさんのバージョンがすぅーっと馴染んでいる。
皆さんの思い出の一曲はなんですか? NATSU