外国語力は、大きく二つに分類できます。「受動的能力」と「能動的能力」です。受動的能力には聞く力と読む力が、能動的能力には話す力と書く力が該当します。そして、それが母国語であれ外国語であれ、全ての人が必ず能動的能力よりも受動的能力に優れているのです。私達が赤ちゃんの頃から、どのように母国語力を獲得してきたのかを考えてみてください。最初は自分の周りの人達が話している言葉を聞いて、徐々に意味が理解できるようになっていったことでしょう。言葉を話すことで自分の意思を伝達できるようになるまでには、それよりずっと多くの時間と労力を要したはずです。記憶にはありませんが^^;皆さんの中には英語のTOEIC試験を受けたことのある方も多いかと思いますが、私がアメリカに住んでいる時に知り合った韓国人留学生でこんな子がいました。韓国の大学生はたいていTOEIC満点保持者(スゴイ!!)なのですが、彼女もご多分に漏れず満点でした。それなのに、極々簡単な日常会話すら全くと言っていいほどできないのには驚きました。これは、「受動的能力>能動的能力」の極端な例です。TOEICの問題は受動的能力だけで解けるようになっているので、このような現象が起きるのです。皆さんが韓国語能力試験TOPIK Ⅱの쓰기(作文)に苦手意識を持ってしまうのも、쓰기領域だけ能動的能力を試されているからにほかなりません。ですから、話す力がなかなか伸びないと悩むのはもうヤメにしてください!一番時間がかかるのも至極当然なのですから。焦らず腐らず淡々と練習を続けてください^^
それからもう一つ、外国語力向上の道には盲点があります。それは、「母国語力」です。世の中には、バイリンガル・トライリンガル・マルチリンガルと呼ばれるうらやましい人々が存在します。しかし、実はそんな人々でさえ、複数言語の能力が全く同じということはあり得ず、必ず言語間で能力に差があります。これまた私の知り合いの日英独トライリンガルの話ですが、日独ハーフで幼少期をドイツで、高校・大学時代を英語圏で、それ以降を日本で過ごした彼女の場合は、ドイツ語>日本語>英語という自覚があると言っていました。つまり、彼女にとってはドイツ語が母語にあたるのでしょう。どんな人間であっても、外国語力が母国語力を上回ることは決してありません。外国語を学ぶ人は母国語をないがしろにしがちですが、外国語力向上には母国語力が不可欠なのです。生徒さん達を見ても、日本語でお話している時に「この方は国語力の高い方だな」という印象を受ける方は、100%韓国語力もリンクしています。韓国でお会いした、同時通訳者として第一線で活躍されている方々は皆口をそろえて、「通訳・翻訳には、外国語力よりもむしろ国語力が重要だ」とまでおっしゃっていました。ですから、外国語力が頭打ちになっているなあと感じている方には、ご自身の国語力を振り返ってみることをおすすめします。そして、たまには母国語の新聞や本を読みながら、表現力を育ててみてください。
最後に余談になりますが、外国語は使わないと忘れる一方ですよね。何と、母国語も使わないと忘れちゃうんですよ!海外生活経験者なら同調してくださると思うのですが、外国語漬けの毎日を送っていると日本語がどんどん変になっていきます。住んでいる国の言語に引っ張られて、日本語なのに日本語じゃない言語で日本人同士が会話しているなんていうのは日常茶飯事なんです。皆さん、俳優の大谷亮平さんをご存じのことと思います。亮平さんは12年間も韓国で芸能活動をされていて、ちょうど私が韓国在住の頃、毎日ドラマでお見掛けしていました。彼の日本語にも、長い韓国生活の副作用(?)がばっちり現れています。日本のバラエティー番組で彼がお話しているのを聞いていると、頭の中でまず韓国語で考えた文を日本語に翻訳してしゃべっているのが、手に取るようにわかりますよ。構文が完全に韓国語なんですもの~^^面白いですね!