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Cafetalk Tutor's Column

Keisuke.H 講師のコラム

I was a bocchi.61 青春のゼロ

2024年11月20日

授業中、眠気に負けることが多かった僕だが、
実技科目だけはそうはいかなかった。
移動教室があるおかげで、居眠りし続けるわけにはいかなかったのだ。
 
美術では未完成の作品を残し、
音楽では楽譜が読めず、
体育では苦手な運動をなんとかやり過ごす日々。
その中で唯一、楽しみを見出せたのが技術だった。
 
技術の授業は不思議と熱中できた。
担当のスズキ先生の授業は面白く、作業そのものにも魅力を感じたからだ。
ノコギリを使ってスリッパ立てを作る課題では、
友人のオックンと完成までの速度を競い合った。
結果、どちらも急ぎすぎたせいで、ほぼスリッパが立たないスリッパ立てが完成。
実用性を完全に無視した作品は、家に持ち帰った後、わずか数日で撤去された。
 
はんだゴテを使った回路作りも印象深い。
道具を手に作業を進めているときは、
まるで時間が止まったかのように没頭していた。
銀色のはんだが溶け、接合部分が整う瞬間には、独特の達成感があった。
あの集中力を、他の科目にも活かせたら良かったのにと今では思う。
 
パソコンのタイピング練習もクラスで早いほうだったと思うが、1位には及ばなかった。
それでも、課題のイラスト作成や文書作成には自信を持って取り組んでいたし、
パソコン検定4級にも問題なく合格した。
何より、手を動かす作業の心地よさは、他の授業にはない魅力だった。
 
技術の授業は、成果物の出来栄え以上に、
作業に没頭した時間そのものが大切な思い出として残っている。
あのスリッパ立ても、役に立たなかったとはいえ、
当時のひたむきな気持ちを思い出させてくれる。
実用性ゼロの作品は、現代アートの先駆けだったのかもしれない。

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