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Cafetalk Tutor's Column

Keisuke.H 講師的專欄

I was a bocchi.⑩トンボの記憶

2024年3月29日

父は笑いながらこんな話をした。
「ケイスケが子供の頃、
 ワンワン泣き出したときがあった。
 何かと思って釣り場から車に戻ってみたら、
 小さいクモにビビって泣いてたんだ」
私はその話のどこが面白いのか理解できなかった。
 
虫が嫌いだった。
カブトムシ、クワガタなどの甲虫にも興味はなかった。
近付きたくないし触りたくもない。
昆虫採集をする人がいるのは知っていたが、
これっぽっちも魅力を感じなかった。
 
父とは早朝か夜中に海や山に釣りに出掛ける。
すると、自販機の取り出し口には蜘蛛の巣が張ってあり、
照明の光に小さな虫が集まっていた。
私はその中に手を突っ込むことができなかった。
父は溜め息を吐きながら車を降りて缶ジュースを買った。
 
トンボは例外で触ることができた。
捕まえやすかったからかもしれない。
秋になると団地のコンクリートの壁に数十匹止まっていた。
ゆっくりと近寄ると簡単に捕まえることができた。
 
ある日、友達と二人で虫かごいっぱいにトンボを集めた。
虫取り網なしでも大量に集めることができて嬉しかった。
満面の笑みで家に持ち帰ると母に怒られた。
逃がしてくるように言われたが、
私は飼いたかったから頑なに断った。
翌日、トンボたちは全滅した。
 
その日からトンボも苦手になった。
オニヤンマやギンヤンマは写真や図鑑で見るとカッコいいけど、
実際に近くで見たり触ったりするのはできなくなった。

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