父は公務員、母は専業主婦。
周りからは仲の良い家族に見られていた。
でも、両親は家で毎日ケンカをしていた。
父は育児にはあまり関心がなかった。
趣味の釣りに出かけては、母に怒られてケンカになった。
父と遊んだ記憶もあるが、
それは趣味の延長線上にあっただけだろう。
父には釣りやキノコ採りに連行された。
私はそれらを面白いと思ったことはない。
そういう意味では、私が父と遊んでいたのかもしれない。
ケンカは暴力にはならないものの、
毎日大きな声で怒鳴り合っていた。
特に父の声が大きくて不快だった。
ヒステリックに声を荒げるのはいつも父。
私はこんな大人にはなりたくないと思った。
母はケンカが終わると一人で泣いていた。
私は心配して近くに行った。
すると、母は泣きながら私に何か言っていた。
内容は覚えていない。
ケンカが絶えなかった環境だったからだろうか。
私は正義の味方に憧れた。
悪事や悪人は許せなかった。
両親のケンカを止めることはできなかったが、
そう思うことで自己嫌悪しなかったのかもしれない。
正義の味方。
それは決して弱者の味方ではない。
正しいかどうかが重要だった。
例え弱者でも間違えていれば救わない。
あくまでも正しい方の味方をする。
そんな歪なヒーローに憧れていた。