私は一人ぼっちだった。
団地の公園は子どもたちで賑わっていたが、
知らない人と積極的に友達になれるほど明るくなかった。
幼稚園に入ってようやく一人友だちができた。
ナカミチ君だ。
彼も団地の住人で、家が近くよく遊びに行った。
私もナカミチ君もファミコンを持っていたので、
一緒にゲームをした。
ただ、私はゲームが下手だった。
ナカミチ君はとてもゲームが上手かったので、
クリアできないステージを変わりにやってもらった。
ずっとナカミチ君の上手い操作に見入っていた。
私は見るのが好きだったから喧嘩にはならなかった。
スタートボタンを一回押すと中断されるゲームが多い中、
押し続けないと再開してしまうゲームがあった。
私の手に負えない難しいステージを簡単に攻略するナカミチ君。
突然、
「トイレ行ってくるからスタートボタンを押しててね」
と言いコントローラーを私に渡すと、
テレビの前から消えた。
私がゲームを続けたら一瞬で死んでしまうので、
スタートボタンを押し続けた。
ナカミチ君はなかなか戻らなかった。
どうすることもできずにコントローラーを眺めていた。
「幼稚園のアルバムに『僕と友だちになってくれてありがとう』と書かれていたよ」
と母に言われた。
彼も友達が少なかったのかもしれない。
いつも2人で一緒に弁当を食べていたらしい。
そんな彼は転勤族だったのだろうか。
小学校のときに転校した。
ナカミチ君を送る会のとき。
私は悲しくて泣いた。涙がポロポロ落ちた。
ナカミチ君の顔を見ることができなかった。
ようやく泣き止んでナカミチ君を見ると、
彼は笑顔を浮かべていた。
私にはそれが理解できなかった。
余計悲しくなって更に泣いた。