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Tutor Naoko.S 's Column

学ぶことは真似ること:研究テーマの決め方

2024-02-01

大学生の学業の悩みといえば、レポートや卒業論文などのテーマ選びではないでしょうか。「国際法のレポートが出たけど、何を書いたらいいかわからない」「ゼミで卒論のテーマを発表したけど、先生に全否定されちゃった」などなど、学生たちの声をよく耳にします。成長につながるなら悩むことが悪いことではないかもしれませんが、「私は批判ばかりされるようなダメな人間だ」と自己否定につながる危険性もあります。学生たちがもう少し気が楽になるような研究指導のあり方はないかな、と私自身悩んでいて、初めて研究する人向けに記事を書いてみることにしました。私のおすすめは、「研究テーマはゼロから考えない」ことです。

 

 1.   研究手法を学ぶのが先

「先に手法ありき」の考え方に否定的な先生もいらっしゃいますが、私は先人たちが築いてきた研究手法を学ぶことが先だと思っています。学部生も大学院生もまずは先行研究から研究手法を学び、それを応用させて自分自身の独創的な研究を展開していけばよいのです。ゼロから全く新しいことを生み出そうとすることを「アインシュタイン症候群(彼自身が発達障害だったと言われていますが、そういう意味ではなく、凡人が陥りがちな勘違いを揶揄した言葉)」と言うそうです。世紀の大天才でもないかぎりは、まずは自分の研究分野で現在までにどのような研究がなされているのか、それらの研究でもまだ解明されていないことはないかを徹底的に探るべきです。

 

 2.   1年生のゼミでの気づき

「研究テーマをゼロから考えなくてもいい」という結論に達したのは、私自身のゼミでの指導を通してです。私が所属している学科では1年生のゼミで「多文化共生」をテーマにしたグループ研究をさせ、プレゼンをさせるという授業があります。学生たちはまず「『多文化共生』を研究するってどういうこと?」という疑問で頭がいっぱいになりフリーズしてしまいます。この時、「国籍や民族などの異なる人々が互いに尊重し合って共に生きていくためにどうすればいいかを研究しましょう」と抽象的に説明しても伝わりません。初めての人にイメージを持ってもらうためには個別具体的な研究を取り上げるしかありません。たとえば、コミュニケーションの壁の問題、私の分野で言えば「やさしい日本語」の開発と普及についての論文を紹介したり、多様性への不理解・不寛容の問題とそれを是正するための法改正や政策についての論文を読ませたりします。なんだか方向性を指定しているようで、堅苦しく、不自由だと感じる学生もいるかもしれません。しかし、学生たちに自由にテーマを考えさせようとしても結局は行き詰って苦しくなります。学生に自由に考えさせると、「日本に来ている外国人観光客にインタビューして、日本の好きなところを聞く」などのアイディアを出してくるのですが、「それを聞いて、多文化共生に何の役に立つの?」「日本の忍者が好きだという回答が集まったとして、それを使ってどう社会改善につなげる?」と聞くと、「先生に否定されたからテーマを変えます」となるわけです。以下、繰り返し。「何の役にも立たない研究だ」とか「社会改善につながらない研究だ」と言っているわけではないのですが、初めて研究する人にとっては、これを研究すると何がわかるのかを自分たちで見つけることができないのです。

 



3.  
研究テーマをゼロから考えないで、どうすればいい?

では、具体的にどのように初めての人が研究を進めていけばよいか、2節で述べた1年生のグループ研究を例に説明していきます。教師が示したいくつかの研究事例の中で興味が持てるものを一つ選びます。そして、同じようなテーマの研究をネットなどで検索して集めます。それらの研究が解決しようとしている問題は何か、解決のためにこれまでどのような取り組みがなされてきたか、でも解決していない問題は何かを調べていきます。たとえば、神戸市役所で国民年金などのお知らせを「やさしい日本語」に直す取り組みがなされているけど、本当に効果があるの?他の市でもできる?すべての文書をやさしい日本語にできる?その必要がある?などなど、具体的に考えられてきたら、○○市に住む外国人に普通のお知らせとやさしい日本語版のお知らせを読み比べてもらおう、とか、やさしい日本語で書いてあっても理解できなかったところがないか調べてみようなどといったフィールド調査につながります。その調査結果をまとめて、「市役所のやさしい日本語活用の限界」といったテーマでプレゼンができるということになります。

レポートを書かせる場合も、過去の先輩が選んだテーマを共有したり、先輩のレポートの一部を見せたりするようにしています。先輩を真似ることは別にずるいことではありません。「学ぶことは真似ること」なのです。

 

 4.   一つ目の研究が完成してからが本当の学び

 見よう見まねで研究に取り掛かり、研究発表やレポート作成、論文作成を一度経験してみることが大事だと思っています。その経験が自分なりに考える視点をもたらし、考える素地になります。そして、他に取り組みたい問題が見つかったときに、以前やった研究手法が使えないかなと考えることができます。世紀の大発見をして世界を変えようとしなくても、学生時代には正しい研究手法を学び、蓄積していくことが役目ではないでしょうか。その学びの蓄積が社会に出てから本当に世界を変える力につながると思います。研究テーマに悩んでいる人がいたら、ゼロから考えようとしないで、膨大な真似るべき対象を集めて見てください。

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