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Cafetalk Tutor's Column

Keisuke.H 講師のコラム

おもしろ化学エピソード②

2023年7月2日

化学の実験と聞くとどういうものを想像するだろうか?
炎色反応が一番わかりやすいかもしれない。
ある種の金属を炎に入れるとキレイな色になる反応。
花火は炎色反応の代表的な応用例だ。

あとは、失敗して頭がアフロっぽくなる図がよくある。
そういう派手なイメージがある。私にもあった。

でも、大学に入って実験をしたら全く違う世界だった!
アスピリン(アセチルサリチル酸)の合成をしたときのことだ。
アセチルサリチル酸は高校化学で勉強するから、
実験も簡単で直ぐ終わるだろうと思ってた。
考えが甘かった。

実験の最後に待っていた融点測定。
結晶が融ける温度を測る、ただそれだけなのに非常に時間が掛かった。
実験でできた結晶を少量取り、加熱しながら顕微鏡で融けたかを確認するのだ。
簡単そうに思えるでしょう?
その加熱のペースが非常に遅いのだ。

純粋なアセチルサリチル酸は融点が135℃。
実験室はだいたい20℃。
20℃~100℃は1分間に10~20℃上げる。
100℃~110℃は1分間に2℃上げる。
それ以降は1分間に1℃上げる。
大雑把に計算しても最短35分。
結晶の融け始めから融け終わりの温度を記録する。
もし、加熱ペースが早すぎて融点がわからなくなったらやり直し。

確か、実験室には測定機が2台しかなかった。
実験が下手な私は最後尾に並ぶ。
待つ。待つ。待つ。待つ。

順番が来てやってみると加熱のペースがわからない!
そして、早く帰りたいから1回で終わらせたい。
神経を極限まで張り詰めて観察する。

今融け始めたような?気のせいか?
あっ!融けた!今の温度は何度だ?
全部融けたか?いや、まだだ!
融けた融けた!今何度だ!?

何とか融点測定を終えて片付けをして実験終了。
全部で5時間くらいかかった。もうヘトヘトだった。
派手や楽しいイメージはどっか飛んで行った。
化学は奥が深いと思い知らされた出来事である。

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