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Cafetalk Tutor's Column

Toria 講師的專欄

傾聴への道① 絶望の入り口

2022年4月3日

「何で、傾聴のお仕事をしようと思ったの?」と、よく他人(ひと)から聞かれる。

いろいろと格好良い事を並べたいところだが…。

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わたしを語る時、どうしても外せない
そして、どうにも語るのに躊躇してしまう出来事がある。

わたしは23年前、カナダへ渡るにあたって
しっかりと歯科治療をした。
何しろ、カナダでは歯と目の治療に関しては実費。一切、健康保険でのカバーがない。 

しかし、カナダに渡ってきて数年経った時、何となく口腔内に異常を感じ始めた。
仕事で出張が多く、まだ永住権を取得していなかったわたしは
病院に行く時間的な余裕も、気持ちの余裕も、そして金銭的な余裕も持っていなかった。 

やっと永住権を得て、すこし落ち着いてきた36の時
友人の紹介で、歯科治療で有名な先生を訪ねた。 

昔から歯医者は苦手だ。
でも、しょうがない
初めての海外での歯医者は、やはり恐い場所だった。 

最初に何枚も口腔内のレントゲンを撮られ、衛生士が口腔内をチェックした。
その様子は、何故か私を不安にさせた。

今度は、わたしの主治医となるその有名な先生が私の横に立ち
画面のレントゲンを見ながら、わたしの口の中を1分ほど診た。
いや、1分も診てないだろうか・・・。 

主治医は事務的に、淡々と話し始める・・・

「虫歯も無いし、表面的には一見問題がない。
でも、あなたの歯を支える骨や組織に問題が見られる。
これは、遺伝か先天的な物だと思う。

日本の歯科医で指摘された事はなかったですか?

もっと、早くにこの状態を見つけていたら、もう少しどうにかなったかもしれないけど。

あなたの身体の事を考えると…
ベストはすべての歯を抜歯して
インプラントにするか入れ歯にするかです」
 

わたしは、ただ茫然とするだけだった。 

だって、わたしの歯は全部、揃っているのに。何で!? 

何かを言いたいけれど
何を言っていいのか、どうしたらいいのか
何も言葉が出てこなかった。 

傍についていている衛生士が、わたしの顔を覗き込み
小声で「なんて、かわいそうな・・・」と呟いた。
その同情の眼差しと言葉に、わたしは情けなさを感じていた。 

36で全部の歯を失うのか! 

その現実を、わたしはどうにも受け容れる事が出来なかった。 

別に、命を落とすワケではないんだから…
そう思っても、並々ならぬ絶望感が襲った。 

帰りのバスの中で、わたしは人知れず泣いた。
バスを降りてからも、涙は止まらなかった。 

家に帰り、唯一わかってくれそうな友達に話したけれど
「たかが、歯じゃない」と・・・。

わたしを慰める気持ちで言ってくれた言葉だとわかりながらも
わたしは「あなたに何がわかるのか…」と、心の中で呟いた。

誰も、わたしのこの
“どうしていいか わからない”気持ちに
寄り添ってくれそうな人はいない。

絶望の入り口に、わたしはひとり立っていた。


Richter: Vladimir's Blues(ウラディミールのブルース)2004
あの歯医者での告知から17年。
まだ、私は何とか自分の歯を保っています。
なかなか「現実」を受け容れ難く、セカンドオピニオンを聞いたり
少しでもわたしの希望に寄り添ってくれそうな医師を頼り、ここまで何とか
”温存”してきた!という感じです。

そろそろ、限界は近いと思うのですが
今はやっと、振り切れた・・・というか
あきらめたのかな!?笑
そんな自分がいます。

それなのに!? 
わたしには、残酷にも
別の絶望がやってきます。

to be continued... 傾聴への道②またも絶望、そして宿命を読む

TORIA (o ̄∇ ̄)/

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