ターキッシュ・バン(Turkish Van)は、トルコを原産地とする猫の一品種。トルコのヴァン湖の界隈に源流を有するこの猫は、「バンパターン」と呼ばれる特徴的な被毛の色に加え、水と親和的であるという他猫種には珍しい習性を特色としている。水の中で遊ぶことを特に好むため、ターキッシュ・スイミングキャット、"トルコの泳ぐネコ"とも呼ばれる。
特色
長めの屈強な身体に、その胴体と同程度の長さの太くふさふさとした尾を持ち、頭部の高位置に付いた間隔の狭い耳、そして卵形の大きな眼を有する。雄の身体は特にがっしりとしている。完全な成熟までにはおおよそ3年から5年の時を要する。
オッドアイを持つターキッシュバンの子猫
その被毛は基本的にはセミロング―すなわち半長毛で、その長さは季節に応じて変遷を繰り返す。冬季のほうがより長く柔らかく、夏季は尻尾を除いて短い。ビロードのような柔らかさを有するこの被毛は、その一本一本が防水仕様―すなわち耐水性を備え持つ。身体の曲線に沿って割れるような形で束になりがちなため、動くそのたびに毛並みが自然に整え直されてゆく。胴体のそれは白一色で、耳の周辺と尻尾部だけに何らかの色が着いている。この猫種の被毛色の生じ方はこの形式に限られる。この「耳の周辺と尻尾部だけに色が着いている」という形式を指して「バンパターン」という。元来より地中海地方の猫に見られた被毛の様式であり、ターキッシュバンに特有のものであったことからこの名を持つに至ったこの「バンパターン」は、いつしか品種改良済みの他の純血猫種にも見られる特徴となった。
目色は琥珀色か青色あるいはこれらを持ったオッドアイ。この品種に限ったことではないものの、毛色が白で目色が青の個体には聴覚障害が生じやすい。
この猫種の最も面白い特性は水に興味を示すことである。入浴や水遊びを大変に好み、水泳を行うこともできる。猫といえば大抵は水を嫌うものであり、ましてや水泳などというのは通常は考えがたい行動であるのと対照的である。戸を開放したままの飼い主の入浴は避けられるべきとの注意の喚起があるほどである〔浴槽に跳び込んでくるのを避けるため。
希少な種である。それは原産の地においても同様であり、当地にあっては地域の秘宝としての尊重を受けている。その源流の地たるヴァン湖の佇む一帯は往時にアルメニア国の中心地として栄えていた場所であり、そのことから、その名称を「アルメニアバン」に改めるべきと主張するアルメニア人らの声もあるという。
ターキッシュバンと同じくこの「ヴァン猫」も希少な種であり、「トルコの生きた文化遺産」との呼び声がある。トルコを開催の地とする2010年のバスケットボールの世界選手権大会に際しては、この大会それ自体を象徴するいわゆるマスコットたる存在としての選定を受けることにもなった。