秋田国際俳句ネットワーク( 旧秋田国際俳句.川柳.短歌ネットワーク)の短歌ページに掲載して頂いている歌の多くを、私は掲載月の前月に詠った歌から選んでいる。今回の前月といえば、3月だ。冬には雪深い当地はまだ花の季節ではない。雪解(ゆきげ,雪消とも書く)の頃だ。大量の降雪はほぼ2月に半ばには治まって、それ以降は、次第に雪が降っても春の香りがする淡い降雪になってくる。そして、晴れて太陽の陽が差せば、雪解けは急速に進む。空は雪が蒸発することから生じる濃い靄、霞みで晴れても薄青い。では、地はどうかというと、雪解の頃は、それが進むにつれ、見た目に決して美しいとはいえない。白い雪は、土と混じりあい、雪塊は土に汚されたような景観を呈する。が、春の匂いはする。ほのぼのとした温かいものが嗅覚から伝わってくる。3月の温かい陽と地からの土の混じったものだ。
その日、既に4月に入っていた。雪解けもかなり進んでいた。私は花を詠いたいと思った。家のなかに置いてある鉢植えの花ではなく、戸外で道端で見かける花の歌だ。残念ながら、まだどこを見回しても花は咲いていない。雑草の花さえもだ。田んぼを見れば、どっと一度に解けた雪が土と混じって大きな泥の水たまりを作っている。ふと私は、これをそのまま詠ってみようと思った。
That day, it was already April. Snow already melted, and I wanted to compose tanka on flowers, not the potted flowers inside, but the flowers outside on the path. Unfortunately, no matter where I looked, there were no flowers in bloom. Not even the weed flowers. Then, when I looked around there, I saw the rice fields; the snow had melted all at once and mixed with the soil to form a big puddle of mud. Suddenly a feeling came over me that I should try to write a poem about this as it was.
(C)2021Rika Inami 稲美 里佳
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